金曜時代劇「秘太刀・馬の骨」


以前、この金曜時代劇で同じ藤沢周平原作の「蝉しぐれ」で主演した内野聖陽主演の痛快時代劇。「蝉しぐれ」はどうもしっとりし過ぎてて、私は最初の方で脱落してしまったのだが、今回の「馬の骨」はそれとは180度違った時代劇だった。「蝉しぐれ」とか、従来の正統派の時代劇が好きな人には受け付けられないだろうなとか、容易に想像できるんだけど、私は途中からかなり面白く見ました。
そりゃー私も初回見たときはあまりに斬新な演出にたまげましたよ。奇妙な馬のCGといい、木刀での立会いの時にいきなり広くなる道場とか、エンディング映像の奇妙なモアイ像とか(笑)。でも回を追うごとにトンデモ演出がおとなしくなったのかこちらが馴れてしまったのか、だんだん「こういう時代劇もアリだよなあ・・・」とNHKのチャレンジ精神に拍手したい気分になってしまった。




物語の大筋は至って単純。国家老を務めている伯父・小出帯刀(近藤正臣)の依頼により、幻の秘剣「馬の骨」の遣い手探しをすることになった石橋銀次郎(内野聖陽)。介添役の浅沼半十郎(段田安則)とともに、秘剣が伝えられているという矢野道場六人の高弟と立ち会う。その試合相手の背景にはそれぞれ事情(問題)があり、銀次郎との立会いにより、彼らもまた人生の転機を迎えることができる、というストーリー。

最終目的は遣い手探しではあるが、六人の高弟の背景もきっちり描かれており、単純な「敵役」ではない。演じる役者さんもなかなか渋い配役でちゃんと押さえるところは押さえているなぁという印象。
(六人の高弟は小市慢太郎六平直政本田博太郎尾美としのり音尾琢真高橋和也
浅沼半十郎さんの家族も妻の杉江(南果歩)、娘の直江ちゃんとナイスキャストだし、銀次郎を慕う小出家の女中・多喜(麻里也)との微妙な恋愛関係も切なくて、でも最後はハッピーエンドで後味よかった。麻里也さんって、本格的なドラマはこれが初めてらしいけど、初々しくてかわいい。


しかし何よりも、主役の銀次郎が一番魅力的! ちょっと傍若無人だけど明るくて憎めない性格で、振り回されても半十郎が銀次郎のことを憎めないのもわかる気がしましたよ。原作では半十郎が主役らしいけど、今回のドラマでは銀次郎を主役にした方が躍動感があってよかったと思う。


最終回でもトンデモ演出は健在で、マニアの心をがっちり掴みまくり。まさか時代劇の剣の立会いでフェンシングが出てくるとは!! 完全にやられました(笑)。差し金つきの蝶(?)もあったり、多喜を匿う浅沼家の部屋が地下牢みたいになってたり、最後に銀次郎と多喜が江戸に旅立つシーンでは思いっきり書割のセットを使ったりと、従来の時代劇のみならず、現代劇でもこれほど実験的な演出はしないだろうというドラマでした。
でもめちゃくちゃ面白かったので、また再放送してほしいなぁ。